宝石の国 "硬度3.5"の輝きが照らし出す、儚さと美しさ。
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皆さん、こんばんは。
現役大学生のゼクショーです。
うちは北東北に住んでいる者ですけど、朝方が10℃を切る位寒くなってきまして、最近暖房をつけ始めた今日この頃です。
今回は今週に原作の連載10周年を迎え、物語も佳境を迎えているあの漫画原作の作品をレビューしていきたいと思います。僕自身にとっても、原作を買った事もある数少ない思い出の作品でもあります。
2017年秋放送、『宝石の国』です。
~作品概要~
アニメーション制作は『BEASTARS』等を手掛けるオレンジ。『月刊アフタヌーン』で連載中のフル3DCGアニメ。
どういった内容なのかざっくりと話しますと、人がいなくなった未来の世界で、中性的な姿で擬人化された様な宝石の一族と、目的も分からず突然襲い掛かってくる月人の戦いを描いたものになってます。
放送当時は僕もスマホを買って、ネットサーフィンと共にアニメを観始めた時期です。それ以前はラノベを嗜んできたオタクだったんだけど、本格的にアニメを観る楽しさを身と心をもって味わい始めた契機でもある。CG苦手な人でもぜひ観て頂きたい、本当に素晴らしい作品です。
まああんま言いたくないけど、このあと他のアニメを観るモチベが上がりまくって、結果的には脳内でその存在を干してたんすよね。めちゃくちゃ好きだった事実だけ覚えてたけど。月刊誌連載だから展開遅いし、去年から長期休載してたこともぶっちゃけ分からなかった。
最近にマガポケで漫画の無料公開が始まって、クソ懐かしいと思いながら読んでいたらアニメの事も恋しくなってしまいまして......今回この記事を書くに至りました。5年経った今、もう1回見返してもこれが面白過ぎるんですよね。
それでは、この作品の唯一無二と言える輝かしい魅力について語らせて頂きます。
①宝石の特徴が大きく反映されたキャラ作り
この作品が唯一無二たらしめている最大の特徴は、モデルとなっている宝石の特徴がキャラクターの性格や能力の振れ幅にそのまま反映されている点だと思います。
宝石には単純な硬さを示している硬度、衝撃の大きさやその方向性に耐えうる位の割れにくさを示した靭性がある。
例えば、主人公のフォスフォフィライトは、硬度三半(3.5くらい)、靭性は最低レベルの非常に脆い宝石。
口だけは達者だけど何をやらせても不器用で、事あるごとに体を壊し壊される。
良くも悪くも素直過ぎるのが取り柄で、目先の思い付きで無鉄砲な行動を繰り返す。宝石を束ねる指導者的立場にあたる金剛先生にも怒られてばかりの問題児。とにかく自分勝手でいらぬことで反発しまくる、その落ちこぼれである事に無責任な振る舞いに初めはあまり感情移入できないんですよね。
またある種のヒエラルキーと言いますか、宝石としてのレベルが低いものほどフォスみたいな地味な仕事をやらされて、高いものほど命を懸けた危険な仕事をやらされる.......その時々の状況に合わせて宝石の仕事が決まっている設定も魅力的。
茅野愛衣さん演じるダイヤモンドは硬度が高いから一見戦闘向きかと思いきや、劈開が多くて意外にも壊れやすい性質があるので戦闘向きではないギャップもあるし、同じダイヤモンド属だけど硬度の精度と適合率の高い多結晶同士でできてるボルツの方が実は戦闘向きだったりとかね。
そうしたヒエラルキーの理由付けもしっかりできてますし、そのバリエーションも多種多様で個性的。
このあとフォスに秘められているひと悶着ある設定だとか、彼が月人と関わる中で大きく変わっていく感情表現だったりだとか、宝石が壊れた時の衝撃的な設定を生かした切なさ掻き立てるストーリーが展開されますが、実に素晴らしい。
最終回のラストは、所謂未回収部分を残したまま終わるおれただENDですけど、それでも原作を読む取っ掛かりを作るうえでは期待感マシマシの印象深いエンドになってる。何故なら、その地点で完全に『宝石の国』の身体になっているから。
最初は何もできないフォスにムカついていた僕も、いつしかずっと笑っていて欲しいと思えるようなキャラクターになってしまったんですよね。語弊があるかもしれないが、ぶっちゃけ萌えましたね。
しょうもない事で身体が壊れる度にてめえの自業自得だと卑下していたはずなのに、回が進むごとにそれがもの悲しくなってくる。7話辺りからそれは自覚し始めてて、失って欲しくない.........むしろ助けたいとさえ強く思えるようになってきた。
月人に好き放題やらされる一部の宝石たちの描写も、すっごく切ない。男なんだか女なんだかよく分かんねぇし、人らしさを感じさせない無機質な雰囲気が漂う不思議な宝石たち。存在自体が奇抜なのに嫌いになるどころか、むしろ彼らに目が離せない身体に不思議となるんですよね。
まあそこまで感情移入を誘われた要因は、やはりアフレコ部分の強さが大きいと思ってます。00年代にはすでに活躍されていた能登麻美子さんや、釘宮理恵さん、朴璐美さん等。10年代以降からブレイクし始めたM・A・Oさんや、上田麗奈さん等の華やかな声優陣が物語を彩ってくれます。
主演の黒沢ともよさんの功績もでかいと思います。『響け!ユーフォニアム』の久美子があすか先輩を怒鳴る時の泣き演技が個人的には凄く印象的に残ってますが、ここでも劇団の子役上がりから光る繊細な演技力が発揮されてた印象でしたね。
序盤はとにかくアホな位天真爛漫なフォスのキャラクターを、中盤以降に訪れる身の危険を味わった時の彼の切ない一面を、終盤にそれらを経験した故の感情の変化を自然体で演じられていた気がします。お恥ずかしながらこの作品でともよさんの事を初めて知っただけに衝撃は大きかった。
最終回のラストが印象的で好きなのは、そのおかげでもあるかもしれない。
そういったアフレコ面でもお楽しみ頂けると思いますが、この作品って視覚的な演出面でも相当レベルが高いんですよね。
②圧倒的美しさ!光沢感溢れる3DCGアニメーション
物語を彩るアニメーションも非常に素晴らしいです。原作の絵柄からそうだけど、それを元にしたアニメ側のキャラデザも独特の絵のパワーを放っています。僕はかなり好きだけど、これで敬遠しちゃって中々観れないって人も多いはず。
でもこれが不思議と馴染む。よくCGって手描きと比べると色使いが単調になりがちですが、宝石の光沢を表現する為に多種多様な色が組み合わさって光沢感を演出できているのは本当に素晴らしいと思います。僅かな静止画でキャラが動いてない時でも、自然と目を奪われちゃうというか。
CG慣れしてないと気持ち悪いって思われる方もいるかもしれないけど、作中の世界観自体と相当相性良いと思ってますね。何故なら作中の宝石の存在自体が人間と大きく違って、思い切りフィクション向きの無機質で異質なものだからです。人工物が関与しない事で映える尊さ、美しさをよく感じられます。
宝石たちが軽快に繰り出していくアクションも素晴らしい。僕が特に好きなのは、3話でダイヤモンドが夜の中の森の木々を踊りながら駆け抜けていくところですね。ダイヤモンド自体が癒し枠のポジションだから好きっていうのもあるけど。
そんな個人的な感情を差し引いても、"CGだからここまでできた"のではなく、"CGだからこそここまでできたのだ"と言わざるを得ないクオリティの高さ、美しさに圧倒される。
作中で宝石たちが戦う事になる月人の雰囲気もまた、異質かつ美しい。仏のような神々しさと、悪魔のような禍々しさを同時に秘めている感じが凄くゾッとしますね。
何の目的も分からず地球を破壊しにやってくるって意味では、エヴァンゲリオンの使徒みたいな感じもある。
彼らの技が宝石に当たって一瞬で身体が崩れるアニメーションも結構心にグサりと来るようなドぎつさがありますし。
3DCGアニメーションだと舐めてかからず、この作品の唯一無二たる魅力をぜひその目で確かめて頂きたい。