映画 妖怪ウォッチ シャドウサイド 鬼王の復活 総評
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皆さん、こんばんは。
はじめましての方は、はじめまして。現役就活生のゼクショーです。
気温も上がり、梅雨の季節がやってきつつあります。そんな6月も新卒の企業内定が多く決まる時期。24卒世代である僕も今月中に就職先を決められるよう、いくつかの就職試験を受ける予定でいます。
ただずっと就職の事ばかり考えていてもメンタル的に不安定になるので、ルーティーンとしてアニメを少しずつ嗜む。私の場合、そういう風にメリハリつけて過ごしてきました。
今回は丁度約10年前に社会現象となった、あの作品の劇場版を観てきたので語らせて頂きます。
『映画 妖怪ウォッチ シャドウサイド 鬼王の復活』です。
~作品概要~
原作は2013年に発売されたRPG。同じくアニメ化済みの『イナズマイレブン』を手掛けるLEVEL5が開発。上映時間は約1時間半ほど。アニメ制作は『ポケットモンスター』シリーズでお馴染みのOLM。
翌年放送のテレビアニメを機に、異常な人気を誇った作品になります。子供が好きなキャラクターランキング(バンダイ調べ)で、当時10連覇以上してた『それいけ!アンパンマン』を抑えて1位になった程の反響。当時中1だった僕もスカパー使って見てたけど、周囲の皆が妖怪ウォッチの話しかしなくなった当時が本当に懐かしいです。
その僕個人はというとあまり長続きはしなかった。理由は後述しますが。
急に観たくなったのは、約10年経って単純に懐かしくなったから。20代になって価値観が変わった今だから見れる『妖怪ウォッチ』を探してた所、この作品を見つけるに至った訳です。
世の中の怪事件は全て妖怪のしわざとされる世界。主人公ナツメは妖怪執事ウィスパーと出会い、妖怪を見る事が出来る妖怪ウォッチを手にする(この流れは最初のTV版とほぼ同じ)。それを片腕に嵌めて街に降りかかった最悪の妖怪ウイルスの脅威から世界を救う為、仲間の人間や妖怪と共に立ち向かう。
ラスト45分くらいは本当に面白くて、それなりに爪痕は残せた作品じゃないかなと。ただやはり元々子供向けに作られた雰囲気は抜けきれないのか、それまでの所で長所短所がハッキリしてた印象ですね。とはいえ、このシリーズをそもそも知らない大人の初見勢が見ても全然楽しめるんじゃないかなと思いました。
さて、ここからは僕が観てきた今までの妖怪ウォッチの印象も含めて語らせて頂きます。
本題
まず最初に驚かされるのが、ゆるふわ路線から大幅チェンジした妖怪のキャラデザですよね。僕が観てた頃の『妖怪ウォッチ』によく出てきたキャラが大多数でしたが、動物に近いキャラは猛獣の如く、人型に近いキャラは更に大人っぽく描かれた印象。当時観てた子供は敬遠するかもしれないけど、彼らが動く様子を見てても普通にカッコ良かったっすね。
当時1話から出てたジバニャンに至っては、見た目だけでなく中身まで戦闘狂に様変わりしてて笑いました。 その一方、執事なのに肝心な事はうろ覚えで、その都度カンニングでやり過ごすウィスパーはキャラ変はほぼなかった印象ですが(姿はより人間的に)
『妖怪ウォッチ』が他の子供向け夕方アニメと明確に差別化できた所は、僕は駄洒落を使ったシュールギャグにあると思ってて。本編内容はシリアス展開に多く振ってるとはいえ、随所にそういうギャグで思わずクスリと笑わせてくる仕掛けが用意されてて、地味にお洒落ポイント高いです。
僕が初代TV版にハマり切れなかった一番の要因は、そんな悪くない駄洒落で笑わせられるのにも関わらず、パロネタやブラックジョークが笑いの大半を占めてた所。
ビートたけしさんのギャグ「コマネチ」を模倣して、ジバニャンが「コマニャチ」と言って似たポーズをとる所とかね。なんか独自のセンスで笑わそうってスタンスを感じなかったんですよね。偽物は本物に劣るから無意味だとかは言わないが、芸はやはり個人が強いオリジナリティをもって生み出したものにこそ至上の価値が見いだせるものだと思うので。
妖術使いの親子が(彼らも一応メインキャラ)、本作の黒幕の鬼まろと雲をマシュマロに例える掛け合いが序盤にあったりだとか。他のお笑いに頼りきりだったTVアニメ版から変わって、独自のセンスでお笑いの勝負をしようという意思に感激しましたよ。
そんでまあ本筋の話に移りますか。
冒頭でもお伝えさせて頂いた通り、前半の45分間は退屈だった。ナツメちゃんが怪しげなガチャガチャを見つけて、妖怪ウォッチをはめられる。かつての主人公であるケータ君とウィスパーの出会いを彷彿させるような始まりから、善悪の陣営の事情や妖怪ウォッチの歴史等この作品の世界観を遠回しに説明する時間が延々と続く。
シリーズ初見勢にも見せたいのは分かるけど正直展開はテンポが悪いし、くっどいくっどいなぁって感じてました。仲間を集めて鬼まろと対峙するっていう山場の振りにしてはタメを作り過ぎたなと。
あと行く先々でナツメちゃんの幼馴染のトウマ君がピンチに逢う。そのタイミングでゲストキャラのゲゲゲの鬼太郎が出てくる流れが意味不明だったし、いきなり世界観飛び過ぎてて混乱したのが正直な所。彼も熱い見せ場を見せた訳でもなく、終始頭ポカンとした状態でした。
子供向けの為、台詞が多少ストレートで臭くなってる所はまぁ致し方ない....が。その振りの時間をどこか削って、分かりやすい山場をもう少し作って頂きたかったですね。妖術使いの扱いも若干地味だった所も否めない。
ただその振りの展開が長かった事もあってか、後半45分間の盛り上がり具合は普通に熱いものだったと思いますよ。しっかり期待に応えてくれたというか。
特にトウマ君が心に闇を抱えるようになった背景に迫る描写は思わず感動しました。誰にも友達になれず家で一人ぼっちになると、インターホンの音さえ恐怖を感じるようになる様な閉塞感の魅せ方は秀逸だったし。子供との時間を上手く作れない不器用な大人の身勝手さも表現してくると共に、それと向き合ったトウマ君の立ち直り方も最短距離でハートフルに描いてて非常に素晴らしかったですね。
妖怪ウォッチは妖怪メダルというものをはめて妖怪を召喚するんですけど、そのシーンも最初のTV版に増してスタイリッシュになってた。子供になんとしてでも良いものを見せようという所で、アクションシーンには一切妥協を許さない姿勢を感じます。ジバニャンやコマさんの覚醒シーンもカッコ良かったけど、中でも歴史的に名高い人物や神がモチーフであろう妖怪たちがド派手な技で暴れまわる描写は本当にすさまじかったです。
特に地獄の神がドラゴンボールのサイヤ人ばりに覚醒して鬼まろの攻撃を受け止める描写だとか滅茶苦茶痺れたし、吹雪姫がどでかい頭身の美少女として登場して攻撃する所もほんの少しエロスを感じて実に美味でした。吹雪姫はあの時只のヤンデレ萌え枠だったのが、すごい頼もしくなってて。鬼まろはCGで描写されてましたが、特に違和感なく背景に馴染んでた印象です。
さすがさすが。子供向け夕方アニメを数多く成功させてきたOLMさん、恐るべし。終始圧巻だったと思いますよ。
あとはRPGのストーリーにありがちな、人物をあまり深掘りせずに淡々とゲームイベントを進める事を優先させたような無機質な空気感を全く感じなかった。元々がゲーム原作である事を忘れさせるぐらいには、かなりアニメアニメしてたのではないでしょうか。
総括しますが、本当に意外と悪くなかっただけに色々と惜しかった。トウマ君パートのようなハートフルな描写もあり、元来持ってた駄洒落ギャグもキレを増した一方で、前半の盛り上がりのなさが仇となって後半の締まりに欠けた所は否めないですね。大人向けにも振り切り過ぎずに、子供も楽しませる。そのバランス調整に苦労してる印象はありましたね。
現在でも関東の方で夕方アニメとして放送中らしい『妖怪ウォッチ』シリーズ。僕がリアルタイムで追ってた14年~15年ほどの勢いはないが、あれから数年経って成人した人たちやこのレビューを機に少しでも興味を持っていただけた方がいましたら、是非とも見て頂きたい1作ですね。
そんな訳で、次回も来月の第2金曜日でお会いしましょう。それでは。