ゼクショーのアニメブログ

主に深夜アニメ30分枠のレビューをしていきます。毎週金曜日20:30更新!!※2023年4月以降から第2金曜日の20:30に更新予定※

AIR 長い長い時の輪廻を越えて綴られていく、壮大な夏の思い出。

前回の記事はこちら↓↓↓

 

 

 

 

xexiow06375.hatenablog.jp

 

 

 

 皆さん、こんばんは。はじめましての方は、はじめまして。

 

 

 

 

 現役大学生のゼクショーです。

 

 

 

 

 8月も終盤に差し掛かってきました。まだ暑い日はもう少しばかり続きそうですが、暦の上では夏の終わりの時期に差し掛かってきましたね。夏アニメも折り返しを迎えていますし、僕自体もあと2週間ほどで夏休みが終わります。

 

 

 

 

 7月頃から当ブログで行っている、"夏にこそ観たいアニメ"の企画。第5弾となる今回が最終回。

 こんな時期にこそ、夏らしさが詰まりまくってるうえに非常に印象深いストーリーを持った作品を観て、今年の夏の思い出に区切りをつけておきたい。そんな思いに浸れる偉大な作品をご紹介させて頂きます。

 

 

 

 

 2005年放送、『AIR』です。

 

 

 

 

タイトルロゴとキービジュアル ※「dアニメストア」配信ページより、引用※

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~作品概要~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 原作はkeyが開発・発売したPC用18禁ゲーム。発売は2000年。エロゲ業界では異例の10万本を売り上げ、数多くの機種に移植されています。アニメ制作は『涼宮ハルヒの憂鬱』、『けいおん!』等を手掛けた京都アニメーション

 

 

 

 

 簡単に物語の概要部分をお話ししますと。

 

 

 

 

 さすらいの青年、国崎往人は海辺の田舎町で出会った少女神尾美鈴の家に居候することになった。その中で出会った町の人々との関わりを通じて壮大な世界の謎が明かされていく________というものです。時系列や物語の視点が異なる3部構成となっており、各ルートの意味合いが異なります。

 

 

 

 

 劇場版もありますけども、作品の魅力が伝わりやすいのは後者だと思いましたので、今回はTVアニメ版の方をレビューさせて頂きます。

 まあ僕自身、毎回この時期になると1回観返してしまうぐらい好きな作品でもあります。

 

 

 

 大前提としてシナリオの構成自体が面白過ぎることもありますが、演出など総合的な部分を含めて視聴者の作品への没入感を非常に加速させるタイプの作品だと僕は思っています。感情が乗せられる部分が非常に多い作品故に語ることが難しいですが、極力ネタバレなしでその魅力について語っていきたいと思っています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

観鈴ルートの破壊力

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 まず言っとくことがある。

 

 

 

 

 先ほど載せたキービジュの絵でこの作品を敬遠されてる方も少なくないかと思います。確かに非常に個性的で癖が強いし、本当に広くアニメを観たい方向けのド萌えなキャラデザですよね。僕も初見は困惑したものです。

 そんな理由でこの作品を観ない方々に言いたい。あんたら、なんてリスペクトがないんだと。

 この癖あるキャラデザに文句を言うということは、原作の空気感に寄せたアニメ制作陣とこの作品と共に約20年以上の歴史を紡いできたkeyの歴史そのものを否定する、愚かな行為だと思います。

 見終わったあとの満足感をしっかり得られる方であれば、誰でもそう言えてしまうくらいの偉大な作品です。原作も素晴らしいものだと同時に分かるしね。

 

 

 

 

 そんでストーリーの話に入りますけど、ぶっちゃけ序盤1~6話はあまり面白くなかった印象。クオリティは決して低くないしつまんないって訳じゃないけど、ついつい退屈になってしまう。何故かと。

 往人美鈴を含めた3人のヒロインと出会って彼女達が持っている秘密について追っていくわけですけれども、正直に言って長い事振りとなるだろう展開に付き合わなくてはならないですし、その意味が6話地点では理解不能な状態で終わるから。

 

 

 

 

 keyの醍醐味と言えば、現実世界の日常の中に不意に潜む強烈なファンタジー要素。同ブランド作品である『CLANNAD』にも、岡崎朋也がヒロインののとある病気を治すための手掛かりを見つけるまでの下りと、そこに辿り着いた時の感動シーンとかがもろにそれです。

 

 

 

 

 この作品もまたストーリーが進むごとに新たなファンタジー設定を提示していくわけですけども、その設定がこの物語に与える意味合いっていうのはすぐには明かされない。中には、別にファンタジー要素が関係してないただの人間ドラマじゃねえかって展開もある。

 これにはkey系列のアニメ化第1作の『kanon』から観られている方であれば、keyじゃないエロゲでもそれはやれるやろって印象を抱く方もいるかもしれない。僕はそうでした。

 

 

 

 

 2人のヒロインについて掘り下げられるルートが終わって、最後に描かれるのが観鈴の秘密に関わるエピソード。

 

 

 

 

 これが非常に泣けるんですよね。

 この作品は、神尾美鈴という少女の身に1000年以上の輪廻を越えて受け継がれてきた呪いの謎を解き明かす物語。その非情で残酷な呪いに苦しむ彼女の身に潜む舞台裏や、それを知ることになる国崎征人というキャラクターを通してその悲しさ溢れる展開に胸が張り裂ける程の感情を覚える訳ですよ。

 

 

 

 

 彼女の状況を一言で言うなら、望まずして重い十字架を背負わされたような状態。身内にも、親しい友達にも、凄腕の医者であったとしても、誰にも救うことができない苦しみを若い身で背負っている。そのどうにもならない悲痛な光景に第三者として入り込む我々視聴者の心の中で、その無力で虚しい感情が溢れまくって止まらない訳よ。

 

 

 

 

 ターニングポイントとなるのは物語の視点が切り替わる7話以降。征人がさすらいをしている目的の答えや、観鈴の呪いが何故受け継がれることになった理由。1000年前に遡って、そのファンタジー設定の背景が全て明らかになる。

 大前提として、ある程度その説明不能な不思議な設定を受け入れられなくては話にならない。定義は様々だけどファンタジーとはそれをウリにしているのだから。

 個人的にはその設定の生かし方も巧妙で作品への没入感が高まってるように感じたし、その過去のキャラの身に起きた出来事にもしっかり感情移入させられました。

 謎を回収する役割を担うだけでなく1つの物語としてよく成り立っていて、非常に意味のあるものだったと思います。

 

 

 

 

 

 そうやってエモエモな展開を緻密に積み重ねた後に、畳み掛けてくるように我々視聴者をボコボコにしてくるのが10話と11話。最終回もそうか。ここでも物語の視点が別のキャラクターに切り替わります。

 これは実際に観て頂きたいので多くは語らんが、観鈴とその叔母さんの熱い抱擁シーンに込められた家族愛の表現には涙を流さざるを得なかったですね。1000年以上の時を越えて、往人の目的が成就されたって意味でも鳥肌モノでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

②当時無名だった"京アニ"の底力を感じさせる演出

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 当時の京都アニメーションは、2006年に『涼宮ハルヒの憂鬱』が売れるまで無名の制作会社でした。元請作業もあまり行っておらず、後続の作品と比べるとこの作品にはあまり予算がかけられていない印象を受けた。

 

 

 

 

 ただ当時から限られた予算の中で、細かいものでも何でも良いから動かし尽くそうという気概を所々で感じますね。静止画のカットを長い時間作らず、何かしら動きまくっているんですよね。CGも使っていないので、古いアニメだからこその温かみを感じます。

 僕的には最近だと『小林さんちのメイドラゴンS』のカンナちゃんがニューヨークに行く回で、そのニューヨークの市街の広告の動きだったり、人混みの描き込み量がえげつなかった場面が印象に残ってますね。あの高クオリティなアニメーションを実現する制作陣の理念のベースが、この作品が作られた地点でもう出来上がってるってことがよく分かる。

 

 

 

 

 また、楽曲面も非常に優秀です。作詞は原作シナリオライターの方が手掛けられてますし、歌唱は全てLiaさんが担当されています。ファンの間で「国歌(くにうた)」と呼ばれ、物語冒頭に流れる『鳥の詩』が視聴者の耳の中に入っていく力は凄まじいものを感じます。未だにそれは強くてこの感想を書くにあたってもう1回観直してもなお、身の毛がよだつ程の神々しさがあります。

 回を増すごとに歌詞の重みが増していくという意味でも、この曲を流すのは演出として大正解だったのではないでしょうか。

 

 

 

 

 劇中挿入歌の『あおぞら』も感動するし、涼し気な雰囲気のあるEDの『Farewell Song』を流して物語を締めるやり方も、作品の親和性をしっかり持たせていて非常に良いと思いました。古いアニメだからといって舐めてかからず、ぜひこういう演出面にも着目して観て頂きたいと思います。