ゼクショーのアニメブログ

主に深夜アニメ30分枠のレビューをしていきます。毎週金曜日20:30更新!!※2023年4月以降から第2金曜日の20:30に更新予定※

GUNSLINGER GIRL 少女の手の中にあるのは、与えられた切なき幸福とあまりに大きすぎた銃。

前回の記事はこちら↓↓↓


 

 

 

xexiow06375.hatenablog.jp

 

 

 

 

 皆さん、こんばんは。初めましての方は、はじめまして。

 

 

 

 

 現役大学生のゼクショーです。

 

 

 

 

 ひとたび放送されればTwitterトレンド1位。AmazonショッピングのBlu-ray&DVD予約数ランキングのアニメ部門1位になったこともある、今期随一の話題作のアニメ『リコリス・リコイル』。皆さんご覧になられているでしょうか。

 

 

 

 

 僕も視聴させて頂いてますが、監督の足立慎吾氏が作品のベースとなった名作が先週までGYAOで配信されていたので、そん時に観てまとめた感想も含めてレビューしていきたいと思います。

 

 

 

 

 

 2003年放送、『GUNSLINGER GIRL』です。

 

 

 

 

 

タイトルロゴとキービジュアル ※「dアニメストア」配信ページより、引用※

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~作品概要~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 原作は「月刊コミック電撃大王」にて連載されていたコミック。

 アニメ制作担当はマッドハウス。先月にレビューした『BLACK LAGOON』をはじめ、『ワンパンマン』や『オーバーロード』などのヒット作を手掛けてきた制作会社になります。

 

 

 

 

 簡単にどういった話かを説明しますと。

 

 

 

 

 舞台となるのは、治安の悪い架空のイタリア。国に有益な人物を害とし殺そうとするテロ組織と、それに対抗すべく身体が改造された少女の殺し屋を運用する機関との戦いを描いたものになっています。物語の視点は、主として対テロ組織側です。

 

 

 

 

 結論から言うと、傑作にして名作。個人的に何百作品観たうちの30選に入れたいくらい、非常に面白かった。

 

 

 

 

 知名度はあまり高くない部類の作品ですが、ガンアクションが好きなアニメ好きの皆さんや、今期リコリコが楽しみで仕方がないファンにも捧げたいレビューとなっております。まだ観ていない方は、このレビューを読んだ後すぐに観てその素晴らしさを実感して頂きたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本題

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 まず大前提の話ですけど、アクションシーンは2003年とは思えない程クオリティが高いです。キャラごとの持ち銃が決まってる訳でもなく、ショットガンやサブマシンガンに至るまで銃のバリエーションが豊富だから、ミリタリーオタクの方はそういった意味でも楽しめると思います。僕はそっちのオタじゃないので、P90くらいしか分かりませんが。

 

 

 

 

 バトル描写もシリアスで悲惨極まりないですし、緊迫感もあります。けれどもこの作品のメインディッシュはそこではない。むしろそのバトル描写以外の脚本の方が良く感じたりするし、そこが本筋です。

 

 

 

 

 超常的な力を持つ彼女達の正体を公的に明かそうとせず、世の中に蔓延る犯罪を未然に防ぐ為に行動する点では『リコリス・リコイル』と非常にそっくりです。.....というか、完全なオマージュじゃねえかと思ってます。

 

 

 

 

 リコリコと決定的に違うのは、その戦いを強いられる少女たちは元々犯罪者たちの手によって無惨な姿にされた後に対テロ組織に拾われる点と、彼らに都合の良いように身体や人格を作りかえられているというドぎつい背景があることです。この設定が作品のディープさに拍車をかけている。

 

 

 

 

 例えば主人公のヘンリエッタは、かつて7人家族の家庭で生まれて不自由なく暮らしていた普通の少女だった。連続殺人犯に彼女以外の全員を殺され、片目や四肢の一部を失う大けがを負う。対テロ組織に回収されて超常的な医療を受けて義体となった後、彼女を監視する担当官のジョゼに忠誠心を持つように記憶までも上書きされて引き取られる。

 テロ組織と戦う為の機械の体も埋め込まれて、ひたすらに戦わされる。

 

 

 

 

 この超常的な医療っていうのも完璧ではないんですよね。中には親の記憶が僅かに残ってる女の子もいる訳です。義体となった彼女たちの戦闘能力は尋常ではないのだが、機械の身体の負荷に耐えられる訳もなく寿命が削られていく。普通の人間の平均寿命よりも短い。体の機能もそれに合わせて徐々に衰えていく。

 

 

 

 

 戦いの部分を除けば、彼女達は何の変哲もない普通の少女たち.....いや、普通に生きていけるはずだった少女たち。義体にされる前にあった大切な記憶は勿論、担当官と日常を過ごしていく中で蓄積されていく記憶でさえも、徐々に忘れていく。身体に負荷をかけすぎてメンテナンスを受ける時にも、徐々に脳が死んでいく。

 

 

 

 

 対テロ組織の非情なやり口に利用される罪のない少女たちが、心身ともに普通の人間でなくなってしまう過程が非常に切ないですし、ただただ見苦しい。犯罪抑止という名目で捨て駒のように使われて、人並みに抱くはずの感情も抑制されている。そんな不完全な状態で得られる彼女達の生の実感が、人為的に与えられたものに過ぎない訳ですよね。

 まあこれは『リコリス・リコイル』についても言えることですが、そんな超常的な彼女達の現状に感情移入しろやと言われてもそれは無理がある。

 何故ならそこに至るまでの経歴がぶっ飛びまくってますし、誰しもそうなる訳じゃないし。人並みの感情がない地点でそこにリアリティはないから。

 

 

 

 

 この作品に深く入り込めるトリガーとなるのは、そんな衝撃的な経歴がある彼女達に接する担当官ではないかと。彼女達の設定や会話がつまらないと言ってる訳ではないですが、これがミソだと個人的には思ってます。

 

 

 

 

 まあ要するに、『リコリス・リコイル』でいう所のミカに感情移入しろやって言ってるようなもん。喫茶リコリコにいるあの黒人おっさんね。

 ここでの担当官自身は生身の人間であり、それなりに優秀なキャリアを歩んできた警察官のような人たち。そちらサイドでの感情表現が非常に秀逸だったと感じました。

 

 

 

 

 担当官によって義体の少女たちへの接し方や、感情表現の変化、合理的に考えて戦闘用の捨て駒でしかない彼女達に対する受け止め方は様々。

 

 

 

 

 普通に道具として義体に武の道を極めさせる人もいたりとか、義体が人並みの感情を持てないまま生きてもらうのは辛いから仮面夫婦のように接してあげる人とか、最初こそ好意的に接してきたけど別れる事が辛くなって突き放すような人もいる。

 

 

 

 

 そのやり取りが人間味が非常にあって、えげつないくらい感情を揺さぶってきて面白いんですよね。

 犯罪抑止の為には感情を殺して手段を選ばない連中。平和に繋げるための福祉活動としてそれを正当としてる訳ですから、いうならば悪い大人な訳ですよね。

 中には本心から彼女達を甘やかす人もいますけど、その行動も我が儘でしかないのが強調されている。忠誠心があるのを良いことに依存させた所でどうなったって死ぬんだと。

 

 

 

 

 そんな事情を知りもしないで戦わせてる彼女達のことを客観的に思うと、とても切なくて悲しくて胸が苦しくなりますし、やり場のない気持ちがモヤモヤと浮かんでくる。けれどもそれは後味が悪すぎる事はなく、凄くハートフル。

 

 

 

 

 原作勢の方によれば、原作との補完性の高いアニオリ回もあって全体的に作中の時系列も整理されているらしい。心裡描写が丁寧ながらテンポも良く、各話ごとにテーマ性が明白にあるので見やすいと思います。

 グロテスクな表現もあるんで苦手な方はお断りかもしれんけど、雰囲気の後味の悪さよりも感動的な部分の方が強調されるガンアクション作品って、これ以外にあるのかなってレベルで感情移入してしまいました。

 

 

 

 

 繰り返しになりますが、ミリタリーオタクの皆さんやガンアクション好きの皆さん、そして『リコリス・リコイル』が好きな多くの方にぜひ観て頂きたい至極の作品になっているかと思います。